【目からウロコ!】 七田式教育の代表 七田厚が語る幼児教育「その時、父は…」第25回 七田 厚

苦しまぎれのウソの申告

都内の下宿で暮らしていた大学時代、二十歳そこそこのころの話です。

 

そのころ、私は毎月、父(七田眞:七田式教育創始者*)に仕送りをしてもらい、計画的に使おうと家計簿をつけていたのですが、小・中学生のころ小遣い帳をつけていたので、それと同じような感覚でした。

 

大学入学当時は、伯母の家に居候させてもらっていました。半年後に独り暮らしを始めたところ、遊興費がかさんで、次の振り込み日までかなり日数があるのに、生活費が底をついてしまったことがありました。

 

そこで私は、本当は買っていない「スペイン語の辞書」などの項目を家計簿に書いて、仕送りの追加を父にお願いしたのです。

その時、父はどうしたでしょう?

 

 

真偽を確かめようとしなかった父

父は、電話の向こうで、「そうか…」と、疑うこともなく、翌日、すぐお金を送ってくれました。

 

私が家計簿をつけていることを父は知っていたはずなのですが、上京して私の下宿に来た時にも、「家計簿を見せなさい」とは言いませんでした。

 

その時の私は、自分のウソが露呈しないかと、ドキドキしていたに違いありません。

 

「厚さん、ちょっと家計簿を見せてごらん。……ん?スペイン語の辞書?どんな辞書を買ったの?(確か、スペイン語は履修してなかったよね…)」そんな会話が始まりはしないかと恐れていたはずです。

 

でも、父は、決して子供を追い詰めるということをしませんでした。

 

だから私は、信じてくれた父に申し訳ないと思い、「こんなことをしていてはいけない」と、大いに反省したのです。

 

 

大きな心で子供の将来の姿を信じること

仮に、父が私を疑って、「ここにそんなことが書いてあるけど、本当はスペイン語の辞書なんて買っていないんだろう?」と言ったとしたら、どうなっていたでしょうか?

 

反省するどころか、「仕送りの額をもっと増やしてくれれば、わざわざそんなことを書かなくても済むのに…」と、自分のことを棚に上げて、父のせいにしていたかもしれません。

 

子供を信頼しきること、それは、「子供が言うことはすべて本当のことだ。」と盲信することではありません。

 

もし、ウソだったなら、「偽りの申告をした自分を恥じ、二度とそんなことはしないと反省して、正しい道に戻って来てくれるだろう」と、大きな心で子供の将来の姿を信じることではないでしょうか。

 

わが身を振り返って、そんなふうに思います。親の愛が子に伝わっていさえすれば、多少、道草をすることはあっても、決して間違った道を歩むことはないと思います。

 

*

七田眞:七田式教育創始者
現在では、世界14か国に広がる「七田式教育」創始者。著書は200冊を超える。